少子高齢化に伴う労働力減少が課題である日本では、外国人労働者の受け入れ拡大によって企業の人手不足が解消されると期待されています。それ以外にも外国人労働者の積極的な採用は企業活動のグローバル化や多言語への対応といったメリットをもたらすでしょう。
この記事では企業における外国人労働者の必要性を解説します。
厚生労働省の資料によると、2021年時点の日本における外国人労働者の数は約172万人です[注]。その数は2011年以降の10年間で約3倍近く増加しており、今後も右肩上がりの傾向が続くと予想されます。
政府は2019年4月に在留資格「特定技能(1号・2号)」を新設しました。特定技能は労働力不足が顕著な特定産業分野12業種での就業が可能となる在留資格です。対象業種には介護や外食業も含まれており、今後は生活に身近なサービスでの外国人労働者も増えていくでしょう。
特定技能1号の取得は「日本語試験」及び業種別の「技能試験」の合格、もしくは技能実習2号の修了が条件です。特定技能の取得者は一定水準の技能が保証されるため、企業としても即戦力となる外国人労働者を採用できるメリットがあります。
2011年に約13万人であった外国人実習生は、2020年には約40万人まで増加しました。[注1]
技能実習は、実習生として来日した外国人が実務を通じて技能や知識を習得するための制度です。実習生は習得した知識・技能を母国に持ち帰り、自国の産業発展に役立てます。
技能実習の制度は2017年に法改正が実施され、実習期間が3年から5年に延長、適用業種も拡大されました。また、2019年以降は技能実習修了後に特定技能への移行できる仕組みが追加されており、習得した技能を日本で活かす外国人労働者の増加も期待されます。
[注1]厚生労働省:「外国人雇用状況」の届出状況まとめ【本文】(令和3年10月末現在)
https://www.mhlw.go.jp/content/11655000/000887554.pdf
ビジネスのIT化やグローバル化が進む現代において、事業規模を問わず外国人労働者の必要性が高まっています。ここでは外国人労働者を採用する4つのメリットを見ていきましょう。
外国人労働者がもたらす大きなメリットが人手不足の解消です。人手不足が叫ばれる業種は多岐に渡りますが、近年ではIT分野における外国人労働者の活躍が目立ちます。
現代のビジネスではITやAIの技術が広く活用されており、それらの管理を任せられる日本人エンジニアの採用は容易ではありません。一方で、海外に目を向ければ優秀なエンジニアや学習意欲の高い労働者が多く見られます。IT分野は言語の違いが障害になりにくいことも外国人労働者の採用が活発な理由です。
外国人労働者の採用により、訪日外国人への多言語で対応できます。近年、日本の小売業やサービス業で重要視されるのはインバウンド需要です。日本に訪れる外国人旅行者の数は年々増加しており、インバウンド需要により業績を伸ばした企業も少なくありません。
外国人労働者の採用で多言語対応が可能になれば、訪日外国人へより積極的なサービスを提供することもできるでしょう。また、職場に外国人従業員がいることにより、日本人従業員のコミュニケーション能力向上も期待できます。
外国人労働者を採用することにより、国や自治体が運営する補助金・助成金の対象となるケースがあります。代表的な助成金は厚生労働省が管轄する「人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)」で、この助成金制度では、外国人の雇用・就労環境の整備を行う事業主を対象に、その経費の一部が助成されます。
なお、上記以外にも外国人労働者を対象従業員に含む助成金・補助金は多岐に渡ります。助成金・補助金を有効活用したい場合は、厚生労働省や経済産業省、もしくは管轄自治体が公表する情報を確認しておきましょう。
急速なグローバル化が進む現代のビジネスにおいて、外国人労働者の採用が海外進出のきっかけになる可能性があります。諸外国では母国語以外に複数の言語を日常的に使用する地域も少なくありません。母国語と日本語のほか、英語や中国語など複数の言語を話せるマルチリンガルな外国人労働者であれば、その活躍の場は更に広がるでしょう。
少子高齢化が進む日本では今後より深刻な労働者不足に陥ることが予想されます。日本の人口増加が期待できない以上、外国人労働者はその必要性をさらに高めていくでしょう。
なお、外国人労働者を採用するメリットは足りない労働力を補うだけではありません。訪日外国人への対応やグローバル展開なども視野に入れつつ、外国人労働者の採用に向き合ってみましょう。